魅力体験

歴史体験  東山道と浦野の駅

自然の美しさ


 「塔の建築もさることながら、そこからの眺めはまた格別であった。夫神岳を間近に望み、裾野へかけて、はるばると緑の平野がひらけている。その雄大な景色は、大法寺が神体山を拝する位置に造られたことを示す・・・」

 白州正子氏は、大法寺を参拝したときの印象を「十一面観音巡礼」のなかでこう語っております。三重塔の美しさとともに、周辺の自然がつくりだす風光の美しさを、彼女は何度も指摘しております。

 自然との調和により日本一美しいとも言われる塔も、その美しさの秘密は塔そのものより、周辺の自然にあるのかもしれません。

夫神山 天神山山頂近く

都からはなれた寂しさ


 「かの子ろと 寝ずやなりなむ はだすすき 

    宇良野(うらの:浦野)の山に 月片寄るも」

 

 (現代語訳)

  あの子の そばで眠ることができない

    はだすすき。 浦野の山に 月が片寄っている。

 

 大法寺の歴史に深く関わる東山道の浦野駅について、万葉集で歌われております。奈良の都から遠くはなれたこの浦野の地が、いかに寂しいところであったかが、伝わてきます。

 東山道の信濃路については、その道の険しさについて別の歌が、万葉集にて歌われております。

 

 「信濃路(しなのぢ)は 今の墾(は)り道 刈りばねに

    足踏ましなむ 沓(くつ)履け我が背」 

                         

 (現代語訳)

  信濃の路は、いま切り拓かれたばかり。切り株に、

    足を踏みつけぬよう、きちんと靴を履いて下さい。

 

信濃路 針の道

ふり返り見た三重塔


 険しい山道をこえ疲れた旅人や、都の生活を寂しく思う人々が、ふり返りふり返り眺めその心を癒したのが、この大法寺の三重塔であります。

 自然が作り出す美しい風光の中にたたずむ、都の気品と優雅さをそのまま伝えた塔の姿は、いつまでも彼ら彼女らの心のなぐさめとなったと思われます。

梅の花 三重の塔

歴史体験 東山道・浦野の駅


 この東山道の旅人や、浦野の駅の人々の想いを体験することができる大法寺遊歩道があります。三重の塔裏側の道を西に向かい、地図にもない木々に覆われた山道を超え、子檀嶺岳、塩野入湖の景勝を眺め、東山道浦野駅跡地を通り、最後に青木村みちの駅に向かうおよそ2㎞の遊歩道であります。

 この遊歩道が通る当郷の地域は、「日本霊異記」にある他田舎人蝦夷(おさだのとねりえびす)が住んだ地とされており、古くから仏教信仰が根付いていた地であります。

 

 三重塔裏の道を東に向かいますと、天神山山頂につながる山道が整備されております。大法寺遊歩道に比べると短いものの、大きな起伏と杉の木に囲まれた道は、奈良時代の東山道に誘うものであります。天神山山頂からは、信濃川にむかって開く信州の鎌倉と言われる塩田平や、夫神岳から子檀嶺岳につながる稜線を眺めることができます。

 

 なおこれらの遊歩道は、実際に東山道が通ったとされる道とは別の道も含まれております。舗装されていない道もありますので、歩きやすい服装で参拝されることをお勧めいたします。

 

子檀嶺岳 塩野入湖