大法寺三重塔の安定感は、一層(初層)から二層、三層と上の層にあがるにしたがい、塔身(塔の胴幅)が小さくなっていることから生まれています。一般的に、塔の屋根は塔身を風雨から守るために、組み物を利用し軒先をなるべく長く出しています。大法寺三重塔においては特に、一層では「二手先」として組み物を二つ利用している一方、二層、三層では組み物を三つ利用する「三手先」となっております。一層は手先が一つ少ない分だけ、塔身(塔の胴幅)が広くなっております。この手先の違いにより、塔の幅に違いがでることが、三重塔の独特の安定感生み出しています。
三重塔の一層(初層)の扉の上に、ひきがえるが脚を踏ん張ったような形をした彫り物「蟇股」がのっております。もともとは上の重みを支える役目をしていましたが、徐々に装飾化されていきました。大法寺三重塔における「蟇股」は、装飾がなく簡素であります。その曲線のみで構成する形が美しさと品を生み、純和様の手法が守られております。
三重塔の内部には、大日如来座像が安置されております。大日如来の後方には二本の柱(来迎柱)が立てられ、二本の柱の間に来迎壁があります。三重塔は鎌倉時代末期に建立されましたが、室町時代に入り、来迎壁や天井に壁画が描かれました。現在はこれらの柱や壁の淵の部分にわずかに文様が残っております。
平成16年に古建築壁画等の復元の第一人者である馬場良治氏により、壁画の復元模写が行われました。唐草の葉を背景に鳥や花が描かれており、同じような図柄は塔としては広島県名王院五重塔、滋賀県西明寺三重塔にのみ見られる珍しいものであります。
復元模写された壁画の一部は、現在青木村郷土美術館に展示されております。